東北大学,大阪大学,スイス連邦工科大学チューリッヒ校は,新たな多機能電子素材として期待される「マルチフェロイック物質」において,機能創出の鍵を握る「らせん電子スピン配列」を,光により直接かつ可逆的に制御することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
近年,物質中で電気と磁気の性質を兼ね備えたマルチフェロイック物質が,物質科学における基礎・応用の両面から注目を集めている。
これらにおいては,画期的な機能を持った電気磁気デバイスや,新しい原理の光エレクトロニクス機能など,従来の科学技術ではなし得なかった新機能の創出が期待されている。そして,らせん型の電子スピン配列が,このような画期的な機能創出の鍵を握るとされている。
研究グループは,第二高調波発生を用いた光学的手法により,TbMnO3におけるらせん電子スピン配列を実空間で可視化することに成功しており,今回,この手法を応用した。
その結果,マルチフェロイック物質TbMnO3に現れるらせん電子スピン配列を,光により直接制御することに世界で初めて成功した。
さらに,波長の異なる光を照射することで,鏡像関係にある2種類のらせんスピン配列を可逆的にスイッチングできることを発見した。
これらの成果は,次世代のデバイス材料として期待されるマルチフェロイック物質の新しい制御手法を提供するだけでなく,将来における光科学・磁気科学・物質科学の融合的発展に新たな道を拓くものだとしている。
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