産業技術総合研究所(産総研)と寺田電機製作所は共同で,60Aまでの直流電流をクランプ型の電流センサーで精密に測定できるポータブル電流計を開発した(ニュースリリース)。
太陽光発電や燃料電池に代表される分散型電源や,電気自動車など直流の電気を利用する機器の普及が進んでいる。また,データセンターでは電力消費量削減のために直流給電の導入が進んでいる。
このようなシーンで電気を効率的に利用するには,簡便に直流電流を精密測定できる電流計が必要とされている。また,直流電流計には,ポータブルで車内や工事現場のような環境でも使用できる利便性も求められている。
こうした現場では,電気配線への取付け・取外しが容易なクランプ型の電流センサーが広く使用されている。しかし,クランプ型の電流センサーは測定精度に限界があった。特に直流の電流測定の際にその問題は顕著であった。
今回,電流計のクランプ型センサー部分に,着磁を検知し消磁を自動で行なう機能や,ホール素子出力のオフセットとその変動を検知し補正する機能を開発,測定精度を大幅に向上させた。さらに,小型化・省電力化を進めて,電池駆動で持ち運び可能な電流計を実現した。
評価実験を積み上げ,最終的に開発したポータブル精密電流計の測定精度を0.1%程度と評価した。これは従来型と比べて約10倍の精度向上にあたる。
今回開発した電流計を電気設備の工事現場や電気自動車の開発現場,大規模な直流給電が行われるデータセンターなどで用いることで,容易に高精度な直流電流計測が可能となる。
今後,工事現場や開発現場における不具合の早期発見による安心・安全・信頼の向上、データセンターでの電力モニタリング精度向上によるさらなる省エネの推進への貢献が期待されるとしている。
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