中央大学理の研究グループは,室温での光照射による有機物からの電子・プロトン移動能を利用し,最高の量子収率で無水メタノールから水素と無水ホルムアルデヒドを生成する,新しい有機光触媒と鉄錯体光触媒を見出した(ニュースリリース)。
近年,二次エネルギーとして期待されている水素をメタノール(CH3OH)として貯蔵し,必要な時に取り出す方法が注目されている。水素吸蔵効率やエネルギー密度の観点からは,無水メタノールからの水素発生が理想的となる。
しかし,従来法では高温条件(100°C程度)と貴金属触媒が必要であるため,より温和な条件で水素を取り出す方法と,それを駆動する安価な触媒開発が望まれている。
一方,メタノールから水素を取り出すことで生じるホルムアルデヒドは,主要プラスチックの一つであるポリアセタール等の原料として需要が高い。しかし,従来法では水を含むホルムアルデヒドが生成するため,脱水に多くのエネルギーが必要となっていた。
研究グループは,光照射により触媒的に無水メタノールから水素と無水ホルムアルデヒドを発生する反応の設計に取り組んだ。研究では,アミノフェノールという安価な有機物を基本骨格に利用して,メタノールから水素と無水ホルムアルデヒドを室温で取り出せる新しい光触媒を見出した。
今回見出した触媒により,今後有機骨格の構造と金属の種類を多様に変更することで,光触媒の活性や耐久性を制御した,より優れたメタノール脱水素化光触媒の開発が期待できるとしている。
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