東北大学は,0.5ナノ秒での情報の書き換えが可能な新構造不揮発性磁気メモリ素子の動作実証に成功した(ニュースリリース)。
集積回路やマイコンの低消費電力化と高性能(高速)化は今後のIoT社会の発展の鍵を握っていると言える。集積回路を低電力化する上では,情報の記憶を担うメモリを不揮発化することが有効となる。一方で高速性という観点では,これまでに開発が行なわれている不揮発性メモリでは,現行の揮発性SRAMと同等の処理を行なうのは困難だった。
今回研究グループは,現行の最高クラスのSRAMと同等のギガヘルツクラスでのランダムアクセスが可能であり,かつ超低消費電力性も兼ね備えた不揮発性磁気メモリ素子の動作実証に成功した。
今回開発した磁気メモリ素子は,現在実用化が間近に迫っている2端子構造の磁気メモリ素子とは異なる3端子構造を有し,また情報の書き換えにはスピン軌道トルク磁化反転という高速性に優れた新しい方式を用いる。
試作した素子は0.5ナノ秒の電流パルスによる信頼性に優れた磁化反転を観測し,併せて閾電流の低減や無磁場動作などのスピン軌道トルク磁化反転の応用上のいくつかの課題について もその解決策を示した。
不揮発性メモリは待機時に電力を消費しないことからセンサー端末のようなスリープ時間の長いアプリケーションにおいて効果的であることは分かっていたが,一方で高速での情報処理能力という観点ではこれまでは揮発性メモリであるSRAMには及ばなかった。
今回,スピン軌道トルクを用いた新しい磁化反転方式を用いる磁気メモリ素子において最高速クラスのSRAMと同等のランダムアクセス動作が可能であることが示されたことにより,低消費電力性に優れ,かつ高い演算性能を有するマイコンなどの情報処理端末の実現が現実的なものとなった。
また今回開発した磁気メモリ素子は待機時だけでなく,動作時の消費電力も極めて低く抑えられることから,現在微細化の壁に直面している半導体集積回路技術の救世主にもなり得る可能性を秘めているとしている。
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