NEDO,短期材料開発手法の構築に着手

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は計算科学を活用して,機能性材料の試作回数や開発期間を1/20に短縮させる共通基盤技術の開発に着手する(ニュースリリース)。

日本が強いとされる材料分野での競争力を今後も維持・強化していくためには,新しい機能性材料を創出し続けていくことが必要。これまでの材料開発では,技術者が「経験と勘」に基づく仮説を立て,実験による検証を繰り返すことで最適な構造や組成を求めてきた。

しかし,この方法では製品化までに非常に長い時間とコストがかかる。そこでNEDOは試作回数や開発期間の大幅短縮を目的に,従来型の実験的手法に計算科学を融合させた革新的な材料開発手法を構築する。

その手法として,(1)マルチスケールに応じた計算科学,(2)大量のデータから法則性を見出す人工知能(AI)等,(3)仮説と実証を効率良く行なうためのプロセス技術・計測評価技術,これらを統合することで従来の材料開発と比較して試作回数や開発期間を1/20に短縮する基盤技術を構築する。

具体的には,(1)では第一原理計算,分子動力学法,有限要素法などを活用してナノスケールからマクロスケールまでの状態をシームレスに表現することで,材料機能を信頼性高く予測するマルチスケールシミュレーション手法を開発する。

(2)では人工知能(AI)等を活用して所望の機能を発現する最適な構造や組成を予測する材料データ解析技術を開発する。(3)では求める構造や組成を持つサンプルを高精度に試作するプロセス技術を開発するほか,試作したサンプルを「非破壊」または「その場環境(in situ)」で構造や組成,機能を計測する手法を開発する。

いずれも極めて難易度が高い開発となるので,NEDOは先端的な計算科学の技術を有する公的研究機関と機能性材料の開発・実用化に豊富な実績を有する企業とが連携して研究開発を進めるために,集中研究拠点を設置し高度な知見の融合による材料探索手法ブレークスルーを目指す。

また,関連性の強いプロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(内閣府),情報統合型物質・材料開発イニシアチブ(科学技術振興機構)との連携を推進する。