日本電信電話(NTT)と東京電機大学は,線スペクトルが等しい間隔で並んだレーザー光源であり,光のものさしになることが知られている光周波数コムを用いて,マイクロ波・ミリ波発生装置の雑音を従来の100分の1に低減することに成功した(ニュースリリース)。
近年,レーダー計測,無線通信,精密分光の分野でより低雑音なマイクロ波やミリ波が必要とされているが,市販のマイクロ波・ミリ波の発生装置は,水晶発振器(基本周波数10MHz)として知られる発振器の周波数を整数倍して,必要とする周波数を発生させるため,例えば,1GHzのマイクロ波を発生させる場合は,10MHzの水晶発振器で発生する雑音が10,000倍に拡大されてしまう。
NTTでは,光周波数コムに注目し,25GHz周波数間隔の光周波数コムを開発してきた。この位相変調器ベース光周波数コムは,一般的なモード同期レーザーベース光周波数コムとは異なり,数十GHzの高繰返しかつ繰返し周波数が可変のパルス列の発生が容易に実現できるが,中心波長から離れるに従って,雑音が増幅され,スペクトル幅が拡大されるという問題点があった。
研究は,この雑音増幅に伴ってスペクトル幅が拡大される,位相変調器ベース光周波数コムの問題点を利用して,高感度な「雑音検出器」として用いることで,従来よりも低雑音な周波数可変マイクロ波・ミリ波を発生させるアイデアの原理実証に成功すると共に,位相変調器ベース光周波数コムの問題点を克服した。
マイクロ波・ミリ波の雑音は,25GHz信号の中心周波数から1kHz離れた周波数の雑音は,-110dBc/Hzにまで低減できた。これは,市販で最も低雑音級のマイクロ波・ミリ波発生装置よりも雑音を100分の1まで低減できたことになる。半導体レーザーの中心波長から,より大きく離れた波長の参照レーザーを用いれば,更に雑音を低減することも可能だという。
また,この技術の汎用性を示すために,低雑音化されたマイクロ波・ミリ波発生装置の発振周波数の可変範囲の拡大を図り,6-72GHzの帯域で連続可変することにも成功した。
今回実証した低雑音なマイクロ波やミリ波は,従来のマイクロ波やミリ波発生装置の雑音を100分の1に低減するもの。今後は,半導体レーザーの中心波長から,より大きく離れた波長の参照レーザーを用いることにより,市販で最も低雑音級のマイクロ波・ミリ波発生装置の雑音よりも10,000分の1まで低雑音化されたマイクロ波・ミリ波発生技術の確立を目指すとしている。
研究グループでは,今回確立した低雑音なマイクロ波・ミリ波発生技術を用いて,次世代の高速・大容量無線通信や周波数・時刻同期技術の精度を向上するための研究開発を続けていく予定。