阪大ら,光合成蛋白質の構造原理を解明

大阪大学,立命館大学,名古屋大学は共同研究により,光合成によるエネルギー変換装置の基本構造は普遍的であることを明らかにした(ニュースリリース)。

高等植物や藻類の光合成で働く光合成蛋白質Photosystem I(PS I)は,太陽エネルギーを利用して炭酸固定等に必要な高い還元力(NADPH)を作り出す。このPSI蛋白質は約30億年前に誕生した緑色イオウ細菌と呼ばれる光合成細菌のもつ光合成蛋白質から進化してきた。

高い還元力を生み出すには,初期電荷分離反応にとって重要なクロロフィルの2量体からなるスペシャルペアが必要となる。約30億年もの長い進化の歴史においても,スペシャルペアを取り囲む蛋白質の構造は,ほとんど変化せずに維持されてきたことが分かった。

また,緑色イオウ細菌の光合成蛋白質の構造的解析はこれまで進んでいなかったが,研究グループで独自に開発してきた遺伝子改変技術を用いることで,世界で初めて変異蛋白質を創出することに成功した。

この研究は光合成蛋白質の構築原理を解明した点において大きな意義があり,初期電荷分離反応を模した人工光合成系の開発に貢献することが期待されるという。例えば電荷分離反応で生じた電子を効率的に取り出すデバイスの開発にもつながる可能性があるとしている。

関連記事「東大,光合成の第1段階の機構を解明」「名大ら,ラン藻の光合成と代謝の同時改変に成功」「千葉大,光合成の電子伝達経路の新たな生理機能を解明