九大,光モードスイッチを作製

九州大学の研究グループは,情報通信研究機構の委託研究「高機能光電子融合型パケットルータ基盤技術の研究開発」の成果により,光の最後の情報通信資源であるモードを交換する光モードスイッチを世界で初めて実現した(ニュースリリース)。

いっそうの通信容量増大のためには,今までにない新しい光の情報資源であるモードの利用が期待されている。人間が服の形・デザインの違いを識別できるように,光でもモードが異なっていれば,異なる光信号として区別することが理論上可能。

光分布の形(モード)には,中心が明るく外側に行くにしたがって暗くなる基本モードだけではなく,例えば左右にピークがあり,中心が暗いモード(1次モード)といった,基本モードとは異なるモードがある。

モードが異なっていれば,たとえ同じ波長(同じ色)であっても異なる光信号として区別できるので,このことを利用すると,同一光ファイバ上に光信号を多重伝送させることができ,通信容量を増やすことができる。しかし今までは,光のモードを自由に交換することのできるデバイスがなく,光モード伝送技術実用化のネックとなっていた。

研究グループは,シリコンからなる光の導波路を使って光の一部を分解し,部分的に位相を変化させることで,光のモードをスイッチ(交換)できる光集積回路を発明し,その基本動作実証に世界で初めて成功した。

シリコンは半導体材料であるため,光ファイバの材料であるガラスとは異なり電流を流すことができるため,屈折率を変化させることができる。このことを利用し,微細な光回路上に分解した光の一部に対して,その位相を変化させることができる。光は波であるため,位相が変化することで,そのモード(様態,パターン)が変わる。

今回の発明を光通信に適用することで,将来は光ファイバ上の情報通信量を現在の100倍以上に増やせることが期待できるという。この光モードスイッチの実現により,将来のいっそうの光通信技術の進展が期待される。

今回の発表は基本実証として2つのモード間におけるスイッチを実験的に実証したものだが,将来は100モード以上のモードスイッチができるようになり,情報通信量を飛躍的に増大させることが期待されるとしている。

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