富士通研究所は,既存の光ファイバーを利用しながら,サーバ間光通信を従来の2倍となる200mに長距離化する技術を開発した(ニュースリリース)。
データセンターの処理能力向上に伴い,サーバ間のデータ通信量が増大し,光インターコネクトによる通信の高速・広帯域化に期待が集まっている。光インターコネクトを実現するには,高速の電気信号を光信号に変換する光トランシーバーが必要となるが,現在,サーバー間のデータ伝送速度は高速なもので毎秒25Gb/sの光トランシーバーが用いられている。
こうした状況の中,ビッグデータなど大容量処理のニーズも高まり,データセンターではサーバーの台数を増やして,分散処理によってシステム全体の処理能力向上を図るため,データセンターの大規模化が進んでいる。フロア面積を拡大してサーバーを増やすためには、各サーバー間を接続する光通信の長距離化が必要となる。
サーバー間光通信で広く用いられるマルチモードファイバーは,25Gb/sのデータ伝送速度で,最長約100mのサーバー間を接続できる。マルチモードは伝搬モードごとに速度が異なるため,伝送距離に応じた高速特性の劣化が生じるモード分散が起こる。モード分散を低減させる特殊な光ファイバーの価格は既存のマルチモードファイバーの約1.5倍で,敷設されている光ファイバーを交換する必要がある。
今回開発したのは,レンズから光ファイバーまで光を中継して伝える中継光導波路を挿入することで,既存のマルチモードファイバーを用いて,モード分散を低減させる技術。
光導波路や光ファイバーでは光を伝搬モードとして扱うが,外部から光導波路に光を結合するレンズでは光を光線として扱うため,それぞれ解析方法が異なる。今回,レンズでの光線解析と,中継光導波路やマルチモードファイバーでの伝搬モード解析とを統合し,レンズ,中継光導波路,マルチモードファイバーのそれぞれで,伝搬モードの変化を統合解析する技術を開発した。
この技術を用いて解析した結果,光が通過するコアの幅がマルチモードファイバーの2分の1である25μmの中継導波路を挿入することで,速度の遅い伝搬モードの発生を抑え,モード分散が低減できることがわかった。
これをもとに,コア幅25μmの中継光導波路を持つ光送信器を考案した。光送信器を製作した結果,従来のマルチモードファイバーを用いて,伝送速度25Gb/sで従来の2倍となる200mの伝送が確認できた。
この技術により光通信の距離が従来の2倍に拡大するため,最大で従来比4倍程度のサーバ接続が可能になる。これにより,大型データセンターにおけるサーバの分散処理能力向上を実現する。
同社では,開発技術を実装した光トランシーバーの小型化を進め,2017年度の実用化を目指すとしている。
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