東大ら,市民の目で重力レンズ候補を新たに発見

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構と英オックスフォード大学,米カブリ素粒子宇宙物理・宇宙論研究所らの研究グループは,カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡レガシーサーベイの観測データを用いた市民参加型サイエンスプロジェクトで得られたデータを解析し,重力レンズ現象の可能性が高い候補を新たに29個発見した(ニュースリリース)。

重力レンズ現象は重力により光の経路が曲げられる現象。なかでも,天体からの光が手前にある強い重力のある領域により曲げられ,天体の像が複数の像として見えたり引き延ばされることを「強い重力レンズ現象」と呼ぶ。強い重力レンズ現象は,暗黒物質分布や銀河の距離測定,さらにはハッブル定数やダークエネルギーといった天文学や宇宙物理の分野において重要な研究手段となってきた。

このような研究上の重要性から,強い重力レンズの影響を受けた銀河の探索が数十年前から現在にかけ盛んに行なわれ,これまでに約500個の候補が見つかっている。

しかし,宇宙空間にある膨大な数の銀河から重力レンズの影響を受けた銀河を探し出すのは困難なことから,効率的に見つけ出すためのコンピュータアルゴリズムの開発が行なわれてきた。このようなアルゴリズムは重力レンズ現象の発見に貢献してきた一方で,重力レンズにより現れる画像とよく似た形の天体の画像と,実際の画像とを区別することが難しいという問題があった。

研究グループは,2013年5月に市民参加型サイエンスプロジェクトのスペースワープス(Space Warps)を立ち上げた。このプロジェクトではカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡レガシーサーベイ(CFHTLS)の画像が用いられ,約37,000名の一般市民が参加し重力レンズの影響を受けた銀河の画像の候補を目で見て探し出した。

これまでCFHTLSの観測画像から重力レンズ現象を見つけ出す際には,2つのコンピュータアルゴリズムが用いられてきた。今回,アルゴリズムで見つけられた重力レンズ現象の候補とSpace Warpsで見つけられた重力レンズ現象の候補の比較を行なった結果,Space Warpsはアルゴリズムで見逃されていた29個の強い重力レンズ現象を見つけ出した。

また,見つかった候補はアルゴリズムで得られた候補とは違い,楕円や螺旋,赤くて小さいものなど様々な性質の重力レンズ効果を受けた銀河を含んでいた。このことから,Space Warpsによる一般市民の重力レンズ現象の探索は,観測データから重力レンズ現象の候補を探し出す上で有用であることが示された。

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