京大ら,有機分子の会合体を評価する手法を開発

京都大学と産業技術総合研究所,およびフィンランド タンペレ工科大学は,有機分子の会合体の構造を可視化し,その特性を評価する新しい手法を開発した。(ニュースリリース)。

新たな有機分子材料を設計するに際して,薄膜中などの分子が会合した状態では,分子それ自身が有する化学構造のみならず,隣り合う分子とどのような会合構造をとって相互作用しているかによって,その膜全体の性質が大きく変化することに注意が必要となる。

そのため,最小の会合構造である二分子会合体のようなモデル系に対して,詳細に会合構造と物性の相関関係を解明する手法が求められている。

これまで,電子顕微鏡によって単一分子を直接可視化することは成功していたが,有機分子の会合体については,会合体が電子線などによる損傷を受けやすく,会合構造が容易に失われてしまうため,観察の成功例はなかった。

研究では,有機ラジカルの特性を活かした化学反応を利用することで,有機分子の会合体をSWNTの壁の外側に形成させて,繋ぎ止めることに成功した。これにより,原子レベルの超高解像度を有する電子顕微鏡を用いた会合体構造の観察と,その会合構造を反映した光物性などの特性評価が可能となった。

有機化学反応により,SWNTの側壁に色々な有機分子を化学結合で連結できることが知られており,この反応を用いると,有機分子が対になってSWNTの上に繋がれるということが,理論的な研究から予想されていた。しかしながら,実際に実験結果でそれを証明した例はなかった。

今回,研究グループが開発した手法は,ピレン以外の有機半導体性分子にも適用できる汎用性の高いもの。会合体構造の直接的なイメージングにとどまらず,光学的・電子的な諸物性を,会合体構造を保ったまま解明できる。

今後は,天然の光合成で重要な役割を果たすクロロフィルの類縁体や,パイ共役系高分子などにも展開するとしている。また有機分子とSWNTを繋ぐリンカーの構造を変えて相互作用の仕方を変化させつつ,それらの諸物性を明らかにして行く予定。

これにより,有機トランジスタや有機発光ダイオード,有機太陽電池などの,有機エレクトロニクスデバイスの性能の鍵を握る分子間相互作用を解明することに寄与することが期待されるとしている。

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