東大ら,術中の微小乳がんをスプレーで蛍光検出

東京大学と九州大学は共同して,乳腺手術において摘出した検体に対して東大が開発した試薬をスプレーすることで,わずか数分で乳腺腫瘍を選択的に光らせ,周囲の乳腺と脂肪組織中の乳腺腫瘍を識別できることを明らかにした(ニュースリリース)。

乳がん手術では,がん細胞を取り切れたかどうか確認するために,切除標本の断端にがん細胞が含まれているかどうかを手術中に診断する検査が必須となっている。しかし病理医が不足している現在,実行できない施設もあるほか,切除面全体の病理検査をすることは不可能なため,がんを見逃してしまう可能性が指摘されていた。

このように,手術中にがん細胞を簡単かつ迅速に検出できる新しい方法の開発が望まれているが,2011年に研究グループは,世界初の迅速がん部位可視化スプレー蛍光試薬の開発に成功した。この蛍光試薬は迅速かつ簡便にがん細胞を光らせるので,手術中に微小がんの検出が可能となり,見逃しを低減させることが期待されていた。

研究グループが開発した蛍光スプレーは,様々な乳腺腫瘍を光らせ,これまで肉眼ではわからなかった腫瘍を明瞭に描出することが可能となった。いくつかの臨床検体では,人の目で視認可能な強さでがん部位が光ることが確認された。

実際には,数cm大の検体の中の1mm以下の小さな病変を検出する必要があるが,この手法により1mm以下のがん組織も検出可能であることがわかった。

研究グループは,蛍光の検出が安価かつ簡便に行なえることから,この技術が一般的ながん検出手法として普及する上で大きな有用性があるとし,現在,東京大学 エッジキャピタル(UTEC)からの投資を受けた五稜化薬と共同し,臨床試験への適用に向けた準備を進めている。

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