微細加工市場向け高出力ピコ秒レーザ事業を強化へ─スペクトロニクス が発表出力2 W の深紫外ピコ秒レーザ

スマートフォンやタブレットPC,ウェアラブル端末などの高機能・高性能電子機器の登場によって,製造現場では,より高度な微細加工技術が求められるようになっている。

こうした中にあって,レーザによる微細加工が注目を集めているが,例えば,スマートフォンの製造プロセスでは強化ガラスの切断や半導体チップの積層・接続に伴う穴あけ加工など,50~ 80 工程でレーザが適用されており,微細加工分野における市場シェアを高めている。

中でも,電子デバイス・材料の開発では熱影響が問題視されるため,短パルスレーザを採用するケースが増えている。特にピコ秒レーザが主流となりつつあるが,その特性により,自動車分野におけるエンジン噴射ノズルの穴あけ,医療分野におけるアクチュエータの穴あけやフィルタなど微細部品への応用も期待されている。

こうした市場では欧米メーカによる短パルスレーザが寡占しているが,競争力の源泉として低コスト化を追及し,高速・高品質加工技術の開発を進めている国内メーカもある。スペクトロニクスはその一社だ。同社がラインナップしているピコ秒レーザはパルス幅50 ps を中心とするもので,加工速度を材料によって3 ~ 25倍に高速化できるのを特長としている。

ピコ秒レーザは光ファイバ増幅とバルク増幅を融合させた「ハイブリッドレーザ」で,この2 月には2 Wを出力する波長266 nmの深紫外ピコ秒レーザを開発した。532 nmのピコ秒レーザに,266 nm波長変換ユニットを組み合わせたもので,これまで課題とされていた波長変換結晶の長寿命化を実現。パルス幅が35 ps,繰返し周波数が50 ~ 1,000 kHz,M2 < 1.5,ビーム拡がり角が<0.5 mrad の仕様で,水冷方式となっている。

2014年末には,大パルスエネルギー技術の開発にも成功。これを応用したナノ秒レーザとピコ秒レーザの開発を進めている。このうち,ナノ秒レーザではDPSSMOPAを試作。パルス幅40 ns のQスイッチDPSSレーザにバルク型光増幅器を融合させ,波長変換モジュールを組み合わせたもので,試作器では波長515 nmで最大4 mJのパルスエネルギーを実現した。

この技術をピコ秒レーザの開発にも応用することで,さらなる高出力化を図るとともに,加工用光学系の開発も進め,これにより,製造現場で求められる仕様要求に対応する。同社はこのほど,産業革新機構より5 億円を上限とする出資を受けた。高出力ピコ秒レーザ発振器と加工用光学系の製造・販売事業を,さらに拡大させるためだ。

同社・代表取締役社長の岡田穣治氏は,「(資金調達を受け)新技術の開発を進めるとともに,特にレーザ微細加工市場の約半数を占める日本を含め,東アジア(中国,韓国,台湾)地域への販路開拓を進める」と今後の事業戦略を明らかにした。◇