筑波大ら,有機太陽電池のヘテロ界面での電荷注入の観測に成功

筑波大学および物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは,典型的な両極性分子であるSubPcを用いた二種類のヘテロ型有機太陽電池デバイスを作成し,超高速分光でヘテロ界面における電荷注入を初めて観測した(ニュースリリース)。この方法は,ヘテロ接合界面における電荷移動を感度良く観測することができる。

低コストかつフレキシブルな有機太陽電池は,次世代太陽電池として期待されている。特に,両極性分子を用いたヘテロ型有機太陽電池は光電エネルギー変換効率8.4%を示し,新しいタイプの有機太陽電池として注目され始めている。しかしながら,ヘテロ型有機太陽電池における光電エネルギー変換過程の詳細はわかっておらず,デバイス設計が難しいという問題があった。

研究グループは,両極性SubPcを用いた二種類のヘテロ型有機太陽電池(電子注入型と正孔注入型)において,超高速分光で電荷ダイナミクスを調べた。その結果,(1)ドナー性6T/SubPc界面におけるSubPcへの電子注入と,(2)アクセプター性C60/SubPc界面におけるSubPcへの正孔注入,の両方を分光学的に確認できた。

いずれの場合でも,電荷注入にかかる時間は300ピコ秒であり,ヘテロ接合型でない有機太陽電池の値に比べて遅いことがわかった。これは,分子の励起状態が各分子層でゆっくりと移動していることを示している。

研究グループは今後,この方法を他のヘテロ型有機系太陽電池デバイスに応用し,有機系太陽電池の光電エネルギー変換機構を解明し,高効率有機太陽電池の開発に貢献してゆくとしている。

関連記事「産総研ら,有機太陽電池においてp-n接合界面が「汚い」方が性能に優れることを発見」「産総研、有機太陽電池の光電変換効率の理論限界は21%とシミュレーション」「分子研、有機太陽電池をシリコン太陽電池と同じドーピングのみで製作することに初めて成功」「OIST,大気中で作製の太陽電池フィルムが高光電変換効率を示すことを発見