日本電気(NEC)は,光集積化技術であるシリコンフォトニクスを活用した小型・低電力な光スイッチモジュールにおいて,光信号の低損失化を実現することで,世界で初めて,ネットワーク規模に応じて入出力数を柔軟に拡張できるシリコン集積光スイッチ技術を開発した(ニュースリリース)。
光ネットワークでは,需要増や障害が発生した場合に繋ぎ替えが必要となることから,大容量の光信号を光のまま効率良く切り替えできる,光スイッチの導入が進み始めている。しかし,従来の光スイッチ技術では,ネットワークの規模拡大に向けて光スイッチのサイズや消費電力の増大が課題となっている。
今回開発した技術は,需要変動や障害に強い光ネットワークの構築を可能にする光スイッチを,シリコンフォトニクスを活用して小型・低電力で実現するもの。
具体的には,微細なシリコン光導波路を用いて,シリコン光回路チップ上に小型・低電力な光スイッチ機能を高密度に集積した。光回路とファイバでサイズが異なる光のビーム径(スポットサイズ)を変換する,同社独自のスポットサイズ変換器を新たに開発し,シリコン光回路チップと光ファイバの結合における光損失を従来技術に比べ約1/10と大幅に改善した。これにより,従来から実現している偏光無依存・高消光比などに加え,低損失なシリコン光スイッチモジュールを実現した。
また,シリコン光回路上で光信号の経路切り替えを行なう多数の微小な熱光素子の配置を最適化し,素子間の熱干渉やチップの温度変動依存性を抑制した。これにより,従来,熱光素子ごとに異なっていた制御電流値をスイッチシステム全体で一つに共通化。従来に比べて制御回路面積を約1/2に小型化するとともに,調整作業を大幅に削減し,制御回路を大型化することなく光スイッチモジュールを増設して容易に光スイッチ入出力ポート数を拡張できる。
これらの技術の一部は,2011年からNECが参画している,情報通信研究機構(NICT)が委託する「光トランスペアレント伝送技術の研究開発(λリーチ)」の一環として進めてきたもの。同社は今後もこの技術の開発を継続強化し,ICTを活用した高度な社会インフラの実現に貢献するとしている。
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