物質・材料研究機構(NIMS)は,安価で高効率な次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池について,再現性や安定性が良く,理想的な半導体特性を示すペロブスカイト太陽電池の構築に成功した(ニュースリリース)。
ハロゲン化鉛系ペロブスカイト(以下,ペロブスカイト)の太陽電池への利用が6年前から始まった。ペロブスカイト太陽電池は塗布などの低温プロセスで作製できること,高い光吸収能力を示すことで大きな電流を得ること,そして高い開放電圧を得ることから安価で高効率な次世代太陽電池として急速に研究が進んでおり,NIMSでも昨年の10月にペロブスカイト太陽電池特別推進チームを発足させた。
これまでペロブスカイト太陽電池は高い変換効率を示すものの,再現性が低く,また電流-電圧曲線の電圧掃引方向によって電流が変わるヒステリシスが観測され,安定性に足りる太陽電池ができていなかった。そのため,ペロブスカイトの半導体特性も明らかにされていなかった。今回,以下のような2つの検討から再現性のある,安定したペロブスカイト太陽電池が得られた。
(1)雰囲気制御が厳格な有機薄膜太陽電池の作製手法をペロブスカイト太陽電池の作製工程に導入することにより,水分や酸素濃度を除くと共に,太陽電池構造をできるだけ単純化したペロブスカイト太陽電池を作製した。
(2)今回,作製したペロブスカイト太陽電池は電流—電圧曲線におけるヒステリシスが観測されなかったことから安定性に問題が無いことがわかった。さらに理想的なダイオード特性を示すことが明らかとなり,ペロブスカイト材料が太陽電池として優れた半導体であることが示された。
さらに,ペロブスカイト太陽電池の内部抵抗解析から,ペロブスカイトの半導体特性を説明する等価回路モデルも提案した。このモデルの1つの特徴は,ペロブスカイト層の電荷輸送過程において,伝導帯-価電子帯間に存在する不純物準位に由来する輸送過程の存在を示すもの。この輸送過程により,ペロブスカイト太陽電池の効率が充分に上がっていない可能性がある。
研究グループは今後,不純物準位の由来とその太陽電池への影響を明らかにしていくとしている。また,不純物準位を取り除き,太陽電池の高効率化を行ない,エネルギー環境問題に貢献していく。
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