森林総合研究所は,熱帯雨林では樹高が高いほど樹木の葉の光合成能力が増加することを発見した(ニュースリリース)。
温帯での研究から,樹高の高い樹木は葉まで水を吸い上げることが難しいため,樹高がある程度以上高くなると光合成能力が低下することがわかっていた。しかし,マレーシアの熱帯雨林で100種以上の樹種について,樹高1mの小さい樹木から50mを超える巨大な樹木まで葉の光合成能力を測定したところ,樹高が高くなると光合成能力が増加し,大きな樹木ほど炭素をたくさん固定できることが分かった。
高木でも光合成が低下しない原因として,年中湿った熱帯雨林の気候が関係していることが推測された。葉は日中,二酸化炭素を吸収するために気孔を開くが,同時に大量の水が失われ乾燥ストレスを受ける。熱帯雨林樹木も日中は強い乾燥ストレスを受けているが,夜明け前には根からの吸水によってストレスから回復していた。
つまり,熱帯雨林では,大量の水を消費しても夜間に水分が十分補給できるため,高木でも光合成の低下が起こりにくいことが明らかになった。これは,日光がよく当たる林冠部で効率よく光合成を行なえるためと考えらるという。
多様な樹木からなる熱帯雨林の光合成能力を正確に推定することは困難だったが,この研究成果は,熱帯での炭素固定能解明に大きく役立つものだとしている。
関連記事「神大,光合成が抑制される環境下で光エネルギーが安全に処理されるシステムの分子メカニズムを解明」「理研ら,コケ植物の光合成反応を担う「集光アンテナ調節機構」を解明」