九大ら,彗星起源となる塵を南極で発見

九州大学と国立極地研究所地圏研究グループの研究チームは,世界で初めて,南極の雪と氷の中から,彗星起源となる塵を発見した(ニュースリリース)。

地球には毎年およそ4万トンもの微細な地球外物質が降り注いでいると考えられている。これは隕石として知られている,より大きな地球外物質の 10倍以上の量になる。微細な地球外物質の中でも最も小さい,百分の1㎜ほどしかない微細な地球外物質は,高度20キロメートル付近の成層圏まで落下してきたところを特殊な飛行機を使って採集してきた。

そうまでしてこの微細な地球外物質の採集を行っているのは,この中に彗星起源であると考えられている,千分の1㎜程の鉱物などの微粒子がごくゆるくつながった隙間だらけの構造を持つものがあるのが理由の一つ。これらはとてももろく,地表で回収することはできないとされてきた。

南極の昭和基地近くにある「とっつき岬」にて,研究チームは露出している氷を,2000年に現地で溶かして作成した水」をろ過して得られた微粒子と,「2003年から2010年の間の,ドームふじ基地近くの雪原の表面の雪」を日本に持ち帰って,クリーンルームで雪を溶かしてろ過して得られた微粒子の中から,成層圏で回収されてきた彗星の塵とされる物質とよく似た隙間だらけの構造を持つ微小な地球外物質を発見した。

雪に含まれるこれらの微小な地球外物質を,透過電子顕微鏡で観察・分析したところ,成層圏から回収されてきた彗星の塵の特徴とされる鉱物や有機物を多く含んでいた。さらに,NASAの彗星探査機「スターダスト」がヴィルト第2彗星から持ち帰った塵に含まれていたものと同じ,レッデライトという特別な鉱物も含まれており,南極の雪と氷には彗星起源の塵が含まれていることが明らかになった。

彗星は汚れた雪球ともいわれ,太陽系を作った鉱物や有機物を冷凍保存したようなものだとも言われている。彗星に含まれる有機物を研究することは,太陽系の中で生命の材料となる有機物がどのように作られていったか考える際の出発点を明らかにすることにつながる。成層圏から微細な地球外物質を回収する際には,シリコーンオイルが使われてきており,これが有機物の分析に影響を与えることが問題になっていた。南極の雪や氷から彗星の塵が回収できたということは,シリコーンオイルの汚染を受けていない彗星の有機物の研究が可能になったことを意味する。

研究グループは今回,太陽系を作った物質の冷凍保管庫ともいわれる彗星起源の物質を手に入れる新たな方法を得た。この新たに見つけられた彗星物質の研究が進むことで,ロゼッタ探査機による彗星の観測データや,将来的にはやぶさ2探査機による小惑星の観測データなどとも比較することで,太陽系がどのように形成されたか,より詳しく検討できるようになるとしている。

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