パナソニック,スマートフォンを用いた高速可視光通信を開発

パナソニックは,LED光源を高速点滅させることでさまざまな情報を送ることができる可視光通信技術を発展させ,その光源から発信されるさまざまな情報を搭載したID信号(以下「光ID」,ID=Identifier)を,スマートフォン搭載のイメージセンサと専用アプリを用いて高速受信する技術を開発した(ニュースリリース)。

従来の可視光通信方式を利用した光IDをスマートフォンを用いて読み取るためには,(1)専用の受光器をスマートフォンに装着する必要がある(2)低速(約10数b/sレベル)でしかデータ送受信を行なえない,などの制約条件があった。

今回同社が開発した技術を利用すると,スマートフォンに専用のアプリケーションソフトをインストールするだけで、スマートフォンと光IDの発信機器(デジタルサイネージ,LED照明など)の間での光ID送受信が可能になる。また,従来技術の数百倍の通信速度(数kb/s)で光IDを高速送受信できる。

同社はこの技術の実用化に向け,伊勢丹新宿本店において,一部の顧客向けにこの光IDを用いた情報提供サービスの試行体験会を実施する。また,2015年1月に北米ラスベガスで開催される「2015 International CES」にて参考出展するとしている。

同社ではこの技術を適用するシチュエーションとして,次のような想定をしている。
●流通業界における O2O2Oマーケティング・ソリューション
内照式の店舗看板やデジタルサイネージなどの光を発信する機器から「光ID」を発信。来店者のスマートフォンにてこのIDを読み取ることでWeb上の詳細情報への誘導や,クーポンの提供など,従来のO2Oマーケティングの枠組みをさらに拡げた”Online to Offline to Online”マーケティングを実現する。

●交通案内看板の多言語化対応の補助ソリューション
内照式の交通案内看板や,構内案内図・周辺案内図から「光ID」を発信。スマートフォンでIDを読み取ることにより,看板の中には記載しきれない数多くの言語による情報提供が,スマートフォンの画面を通して実現可能になる。

●美術館・博物館などでの展示ソリューション
美術館・博物館などで展示品を照らすスポットライトから「光ID」を発信。スマートフォンやタブレットで,その展示品の詳細情報の表示・解説を行なうシステムとして利用できる。

さまざまなコード読み取り方式を用いたOnline to Offlineマーケティングの実例は増えつつあるが,これまでは(1)読み取り対象物に対して近接しなければならない,(2)読み取りに時間がかかる,(3)特別なマークを印刷しなければならないため対象物のデザインに影響が出る,などの課題があった。

今回の光IDシステムは,(1)高速読み取りが可能,(2)数m離れた場所(光ID発信器(LED光源)の横幅の約5倍の距離)からの読み取りが可能,としている。同社は,この技術の実用化により,企業の新しいマーケティング活動への採用を見込む。

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