東北大,青色光で虫が死ぬことを発見

東北大学の研究グループは,青色光を当てると昆虫が死ぬことを発見した(ニュースリリース)。

最近の研究により波長が短い可視光(400~500nmの光,いわゆる青色光)がヒトの目に傷害を与えることが明らかになってきたが,昆虫を含め比較的複雑な動物に対する可視光の致死効果はこれまでに報告されていない。

一方で,UVC(100~280nm)やUVB(280~315nm)といった波長の短い紫外線は生物に対して強い毒性があることが知られており,昆虫や微生物もこれらを当てると死亡する。しかし,これより長い波長の紫外線(UVA:315~400nm)に関しては,昆虫に対する明らかな致死効果は報告されていない。

光は波長が短いほど生物に対する毒性が大きいことから,可視光を当てるだけで昆虫のような比較的高等な動物が死ぬとは全く考えられいなかった。この研究による発見は,これまでの常識を覆すもので,可視光の昆虫に対する強い毒性を示すもの。

研究グループは,様々な波長のLED光を昆虫に当てて殺虫効果を調べた。最初に,378~732nm(長波長紫外線~近赤外光)に渡る様々な波長のLED光の下にショウジョウバエの蛹を置き,羽化できずに死亡した蛹の割合を調べた。

LEDの光の強さは直射日光に含まれる青色光の3分の1程度とした。その結果,青色光を当てた蛹は羽化できずに死亡した。青色光の中でも効果の高い波長と効果の低い波長があり,440nmと467nmの2つの波長が高い効果を示した。そこで,卵,幼虫,成虫に対しても467nmの光の殺虫効果を調べたところ,いずれも照射により死亡した。

次に,蚊(チカイエカ)の蛹に対する青色光の殺虫効果を調べた。蚊も青色光を当てると死亡した。しかし,効果の高い波長は417nmの1つだけで,ショウジョウバエと異なっていた。また,蚊はショウジョウバエよりも青色光に強く,全ての蚊を殺すには,直射日光に含まれる青色光の1.5倍程度の光の強さを必要とした。417nm の殺虫効果は卵でも認められた。

青色光の殺虫効果を,小麦粉などの大害虫であるヒラタコクヌストモドキの蛹でも調べたところ,非常に高い殺虫効果が認められ,直射日光の5分の1から4分の1程度の光の強さで,全ての蛹が死亡した。

これらの結果から,青色光は様々な昆虫種に対して殺虫効果を示すことが明らかとなった。また,その効果は卵,幼虫,蛹,成虫のいずれの発育段階でも得られる。ただし,青色光であっても効果的な波長は昆虫の種により異なる。

また,ショウジョウバエのように,ある種の昆虫にとっては,紫外線よりも青色光のほうが高い殺虫効果を示し,動物に対する光の致死効果は波長が短いほど大きいという従来の考えには当てはまらない動物種の存在が明らかになった。

昆虫の種により有効波長が異なることから,研究グループは,その殺虫効果はヒトの目に対する傷害メカニズムに似ていると推測している。すなわち,種によって吸収しやすい光の波長が異なり,これによって,種により異なる波長の光が昆虫の内部組織に吸収され,活性酸素が生じ,細胞や組織が傷害を受け死亡するとしている。

研究具グループは,波長を工夫することで,衛生害虫,農業害虫,貯穀害虫,畜産害虫など様々な害虫に適用できるクリーンな殺虫技術になる可能性があるとしている。また,青色光やそれに起因する活性酸素の生体への影響を評価する研究にも,今後,役立つと考えている。

研究グループは今回の結果から,例えば青色のLED光などを害虫の発生している場所に当てることで,簡単に殺虫できる害虫防除装置の開発が期待できるとしている。今後,照明メーカと協力し,農業用やゴミ箱に当てる照明装置に殺虫効果のある波長を組込み,製品化へ向けた開発を進めるとしている。

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