NECは,道路橋などの構造物の内部劣化状態をカメラで撮影した表面映像から,計測・推定できる技術を開発した(ニュースリリース)。
昨今,1960年頃に建設された道路橋などのインフラ構造物が寿命の50年を経て更新時期を迎えており,その維持管理コストの削減が喫緊の課題となっている。構造物の寿命は,維持管理手法を従来の異常発生後に修復する「事後保全型」から異常発生前に補修する「予防保全型」へと変えることで延長できるとされており,総務省の試算では,国内の道路橋における今後50年間の維持更新費を約17兆円削減できるとされている。
そのためには,予防保全型の維持管理では異常発生前に劣化原因を特定して補修する必要があり,より高い頻度での保守点検が不可欠になる。また,構造物の内部劣化状態の詳細を調査する必要があることから人手による近接の目視・打音点検も必要だが,こうした点検には足場の構築や,それに伴う交通規制が必要となることから,多額の費用や時間を要しており,コストの低減が求められている。
今回同社が開発した技術は,NECが保有する「超解像技術」,「映像・画像鮮明化技術」,および「4K超高精細映像高圧縮技術」の開発等で培った映像・画像処理のノウハウを応用し,実現したもの。これにより劣化したインフラの早期発見と補修作業の優先付けの効率化を可能とし,インフラ維持管理コストの削減に貢献するという。
1.構造物表面の多数点の微小振動を同時に計測
映像中の物体の微小な動き(振動)を高速かつ高精度に検出できる,独自の「被写体振動計測アルゴリズム」を開発。微小な振動の解析に必要な「カメラ画素数の100倍の解像度での動き解析」において,データ量が多く,従来時間がかかっていた解析処理を,映像圧縮などのノウハウを用いて高速化。これにより高いフレームレートで撮影された映像の高速解析を可能とし,構造物表面の多数点の微小振動の同時計測を実現。
2.表面振動から内部の劣化状態を推定
亀裂・剥離・空洞など,内部劣化が生じている箇所の振動パターンの違いを発見・検出できる独自の「振動相関解析アルゴリズム」を開発。目視で発見できない構造物内部の劣化状態を高精度に推定できる。
これらの技術により,カメラ映像から物体内部の劣化状態を推定できるため,点検による設備の一時停止など事業機会損失の低減が望まれる,工場・プラント内の大型設備など,道路橋などの構造物インフラ以外への応用も期待できるとしている。同社は今後,この技術の実証を進め2015年度中の実用化を目指し,劣化診断コストを従来手法と比べ約1/10以下にするとしている。
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