産業技術総合研究所(産総研)は,貴金属と酸化物が接合したナノ粒子の生成技術を開発した(ニュースリリース)。これまで,合金ナノ粒子の酸化条件と,生成されるナノサイズの形態に関して,系統的な研究はほとんど存在しなかった。
近年,異種のナノ粒子を接合させる試みが世界中で行われているが,異種のナノ粒子の間で接合を作ることは必ずしも容易ではない。一般的に接合の形成は,液相中での複雑な化学反応工程によって行なわれているが,金属カルボニルなどの危険な原料を使用する問題もあった。また,電子デバイスやガスセンサなどの用途では,粒子表面の清浄性が要求されるため,クリーンな条件下での接合法が望まれていた。
今回,典型的な卑金属であるニッケル(Ni)とAuまたはPtとの合金のナノ粒子について研究を行っなた。レーザーアブレーション法によって,ヘリウム(He)ガス中にNi-Au合金やNi-Pt合金のナノ粒子を生成させ,酸化させると,どのような形態のナノ粒子ができるのかを,TEMを用いて詳細に調べた。
合金ナノ粒子は,管状炉で加熱された石英管の中をHeガスとともに流動させることで加熱され,途中で混合させた酸素(O2)ガスによって酸化させた。ここで,粒子を加熱する前にO2ガスをHeガスに混合させてから,所定温度まで加熱して酸化させるプロセス(緩慢酸化)と,Heガスと流動している粒子とO2ガスをそれぞれ所定温度まで加熱してから,両者を急激に混合させるプロセス(急激酸化)を選んだ。
緩慢酸化の場合,AuがNiOに囲まれるコアシェル型の形態の粒子となった。一方,急激酸化では酸化物の一方向の成長が引き起こされることで,ナノスケールの酸化物と貴金属が接合した粒子がクリーンな状態で連続的に生成できた。また,他の種々の酸化物(酸化銅,酸化スズ,酸化アルミ,酸化コバルト)に貴金属が接合したナノ粒子の生成では,生成したナノ粒子の形態は生成条件や酸化物の結晶構造などによって異なることも見いだした。
研究グループは今後,より多くの種類の酸化物と貴金属が接合したナノ粒子の生成を行ない,酸化現象のより深い理解を目指す。また,半導体酸化物と貴金属が接合したナノ粒子については,ガスセンサや触媒特性などの評価も行なうとしている。
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