日本大学,蘭ラドバウド大学ナイメーヘン,NHK放送技術研究所は共同で,磁性体中の磁化情報を「フェムト秒の時間分解能」,「マイクロメートルの空間分解能」,そして「メガピクセルのイメージサイズ」で観測する新しい超高速時間分解磁気光学イメージング装置を開発した(ニュースリリース)。
これまで,磁化の光励起過程および緩和過程に関する研究は多く報告されているが,そのほとんどが時間分解測定に限られており時空間分解測定の報告は少なかった。この技術が実現する「フェムト秒の時間分解能」と「マイクロメートルの空間分解能」は,磁化の波としての振る舞い(スピン波)の直接観測も可能としている。
この装置は磁気光学イメージを,低ノイズ高感度CCDカメラを用いた回転検光子法により取得する。偏光面の回転角分解能は1ミリ度ほどとなっている。GPUを用いた並列データ処理と最適化された独自のアルゴリズムにより,従来技術と比べて約4,000倍と飛躍的な実験速度向上を実現した。
また,超高速時間分解測定に使われるポンプアンドプローブ法を併用することで,サブピコ秒の時間分解能を実現している。実験例として,フェリ磁性体GdFeCoにおける全光磁化スイッチングの時空間分解測定が報告されている。直径2㎛に集光されたポンプ光による,サブピコ秒の全光消磁過程およびサブナノ秒の全光磁化スイッチング過程が高精細にイメージング観測されているという。
今回の成果から得られる情報は,スピントロニクスデバイスの研究開発における基礎的な知見となることが期待される。