KDDI研究所は,エンコーダ制御の最適化技術と処理速度の改善技術により,マルチアングル映像用の符号化標準であるH.265マルチビュー拡張方式に準拠した4K対応リアルタイムエンコーダを開発し,複数の4K映像のリアルタイム伝送を実現した(ニュースリース)。
4Kテレビの本格的な家庭普及を目指した4K試験放送が開始されたが,2020年東京オリンピックに向け,競技シーンを高精細かつあらゆる視点で楽しめる新しい映像体験も期待されている。それに伴い,2014年7月,マルチアングル映像の効率的な圧縮符号化を目指したH.265マルチビュー拡張方式が新たに国際標準として規格化された。
新方式は,異なるカメラ間の画像フレームの類似性を利用して圧縮しており,さらなる帯域削減効果が得られるのが特徴。しかし,符号化方式の効率化やマルチアングルならではの膨大な処理量の削減が課題となっていた。
今回,エンコーダ制御の最適化技術と処理速度の改善技術の開発により,世界で初めて,マルチビュー拡張方式対応4Kリアルタイムエンコーダの試作に成功した。エンコーダ制御の最適化技術では,移動するオブジェクトの輪郭に合わせて最適な処理ブロックサイズを判定することで最大15%圧縮率を向上し,処理速度改善技術では,カメラ間のブロック対応関係をもとに符号化処理の基本情報を継承することで,動き情報などの探索数を大幅に削減しリアルタイム化に必要な100倍の高速化を実現した。
CATV/FTTH網での伝送を想定した実験では,実際にサッカーの試合を4台の4Kカメラで撮影し,4K試験放送と同等の35Mb/s程度まで圧縮し映像伝送した。この技術により,将来的に家庭向けマルチアングル映像やユーザが視聴アングルを自由に切り替えられるフリーナビゲーション映像の配信が可能となるとしている。
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