東京工業大学の研究グループは,太陽光などの弱い非コヒーレント連続光でも,光の照射強度が強くなるに従い,吸収効率が大きく増加する材料の開発に成功した(ニュースリリース)。これは,生体内に含まれるヒドロキシステロイドの中に光増感剤と縮環芳香族を分子レベルで分散することにより実現したもの。
この材料に非コヒーレント白色光を,強度を増加させながら照射したところ,強度の増加とともに可視域の吸収効率が大きく上昇し,色が濃くなる逆過飽和吸収現象を見出した。さらに,この現象が光照射時に縮環芳香族の励起状態が蓄積されることで生じることを突き止めた。
従来,光の照射強度の増加とともに吸収効率が増加する現象は,大型かつ高強度のレーザパルスを照射した時にのみ生じるものとして知られていた。今回の研究では非コヒーレント連続光で,その現象が生じる材料を開発した。
この成果は,過飽和吸収体の応用を大きく拡張する可能性を示すもの。研究グループは,屋外のような明るい場所でより発色する色剤,スキャナの強い光で読み取り時に発色することで偽造を防止するような紙媒体,ポータブルのレーザーポインタの光線から目を守るコンタクトレンズ,日差しの強い場合に自動的に斜光してくれるスマートウィンドウなどへの応用が期待されるとしている。