国立成育医療研究センターの研究グループは,新生児期からの保湿剤塗布によりアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することと,アトピー性皮膚炎発症が卵アレルギーの発症と関連することを確認した(ニュースリリース)。
同センターで実施中の成育出生コホート研究およびその他の最近の研究成果より,乳児期にアトピー性皮膚炎を発症した子どもは食物アレルギーなどの他のアレルギー疾患を発症するリスクが非常に高いことが示唆されていた。
今回,成育出生コホート研究におけるランダム化臨床研究介入試験で,新生児期からの保湿剤塗布によりアトピー性皮膚炎の発症リスクが3 割以上低下することが分かった。そして,アトピー性皮膚炎発症が卵アレルギーの発症と関連することも突きとめた。
微量の血液でアレルギー反応をおこすIgE 抗体を測定する新規方法を用いることにより,アトピー性皮膚炎あるいは湿疹を発症した乳児では卵白に対するIgE 抗体が非常に高い値(オッズ比4倍以上)を示すことを確認した。
最近になってアトピー性皮膚炎の皮膚では免疫細胞が表皮を貫いて突起を伸ばしていることが分かった。今回の検討において保湿剤は皮膚乾燥を防ぎアトピー性皮膚炎の発症を防ぐことが示されたが,一度アトピー性皮膚炎になると保湿剤を塗るだけではIgE 抗体の産生を防ぐことはできなかった。
これまでの成果を総合すると,アトピー性皮膚炎から他のアレルギー疾患の発症を防ぐためには,保湿剤だけでは不十分で,皮膚炎症を抑え免疫細胞の突起を引っ込めさせる必要があると想定される。
研究グループは,今回の成果から,将来の日本国民のアレルギー疾患発症率を大幅に減少させることができると期待している。
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