OIST,安価なペロブスカイト太陽電池の作成法を開発

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,新しい方法を開発してペロブスカイト太陽電池を作製した(ニュースリリース)。このペロブスカイト構造を取る半導体の一種を用いる太陽電池は「ただ同然」の安価な材料で作製できるという。

研究グループは,ハイブリッド堆積法と呼ぶ新たな方法で,安価な有機化合物と無機化合物を原料とした混合物からペロブスカイト太陽電池を作製した。この太陽電池はシリコン系太陽電池と比べ,厚みが約1000分の1と薄いため,生産に要する材料量も大幅に削減できる。

シリコンを加工し結晶シリコンを作るには,高温,真空,高圧といった厳しい条件が求められ,高額な機器を用いた高度な工程を要するために非常に高価になる。例えばこの太陽電池1000㎡分の原料にかかるのと同じ価格の結晶シリコンを購入した場合,シリコン薄膜(ウェハ)20枚ほどとなり,従来のソーラーパネル0.16㎡しか製造できない。

一方,開発したハイブリッド堆積法では,はるかに低い温度条件下,少ないエネルギーで太陽電池を作製することができる。設計したペロブスカイト太陽電池は,厚み135nmで,かつ変換効率9.9%を達成した。このフィルムは半透明なので,窓に利用し,軽量のブラインドのような応用も期待できるという。

研究グループは,この新しい太陽電池の製造に,低コストの印刷プロセス技術を用いることを検討している。このプロセスでは,PETプラスチックでできた薄いシートに材料を素早く堆積させていくことで,安い太陽電池をさらに大量生産することができるとしている。

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