国立天文台ら,天の川銀河内に特異な元素組成をもつ星を発見

国立天文台,甲南大学,兵庫県立大学,および米ノートルダム大学とニューメキシコ州立大学らの研究チームは,すばる望遠鏡を用いて天の川銀河内の星の調査を行ない,これまでに知られていない特異な元素組成をもつ星(SDSS J0018-0939)を発見した(ニュースリリース)。

この星の特異な組成は巨大質量の初代星によってつくられた可能性があり,今回の観測結果は宇宙初期における巨大質量星の進化と元素合成について手がかりを得る上で,新たな知見をもたらす可能性がある。

研究チームは,天の川銀河の初期に誕生したとみられる小質量星の詳しい元素組成の測定を進めるなかで,SDSS J0018-0939 を発見した。すばる望遠鏡に搭載された高分散分光器(HDS)で観測し,スペクトルを詳しく調べた。

その結果,鉄の組成は太陽の 300 分の1程度で,比較的軽い元素である炭素やマグネシウムの組成は,太陽の 1000 分の1以下だった。鉄以外の元素の組成が極端に低いことから,この星は第二世代の星,すなわち初代星から放出された元素が周囲の水素ガスと混ざってできたガス雲から生まれてきた星であると考えられる。

初期世代星の元素組成は,多くの場合,太陽質量の数十倍の大質量星が起こす超新星の元素合成モデルでよく説明されてきたが,今回発見された星の元素組成はそれでは説明ができない。

これに対し,巨大質量星の爆発は鉄を比較的多量につくり出すのが特徴で,予想される元素組成はこの星の組成の全体的な傾向を説明することができる。つまり,この星には巨大質量の初代星によってつくり出された元素組成が記録された可能性があるという。

研究グループは,今回,巨大質量星の進化と元素合成について,比較対象となりうる観測データが得られたことで,今後この分野での研究が活発になると期待している。その結果,巨大質量の初代星が存在したことが確定的になれば,一部が巨大質量星として誕生するという初代星形成についての最近の計算機シミュレーションの結果を強く支持することになるという。

巨大ブラックホールの起源は大きな謎とされているが,巨大質量の初代星の存在が確立されれば,有力な候補となるかもしれないとしている。

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