理研ら,亜鉛が免疫応答に関わる細胞の生存・維持に重要なことを発見

理化学研究所(理研長)と昭和大学らの研究グループは,細胞内の亜鉛濃度を精密に制御する亜鉛トランスポーターの1つ「ZIP10」が,免疫応答に関わるB細胞の初期発生時に,アポトーシスの制御に重要な働きをしていることを発見した(ニュースリリース)。

亜鉛は生命活動に必要な微量元素の1つで、生体内の量が一定値を下回ると,糖尿病や味覚異常,皮膚疾患,成長遅延など,さまざまな病気をもたらす。また,大幅に不足すると非常に重い免疫不全の原因となる。しかし,その分子メカニズムはほとんど分かっていなかった。

そこで,研究グループは,免疫応答に関わるB細胞と体内の亜鉛濃度調整を担う亜鉛トランスポーターの関係解明に取り組んだ。まず,役割が不明であった亜鉛トランスポーターZIP10に注目し,ZIP10の遺伝子欠損マウスとヒト臨床サンプルを用いて解析した。

その結果,ZIP10はB細胞の初期発生時に必要であること、ZIP10を介する亜鉛シグナルがアポトーシスを抑制すること,さらにZIP10がヒト濾胞性リンパ腫に過剰発現することを発見した。

今回の成果は,亜鉛と免疫機能の関係を明らかにする1つの手だてとなるもの。また,まだ明らかになっていない哺乳類の亜鉛トランスポーターの制御機構,亜鉛輸送メカニズムの解明,亜鉛の恒常性異常が原因となる疾患の治療法の開発,さらには亜鉛シグナルの実体の解明を前進させる成果だとしている。

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