理化学研究所(理研)は,天気予報シミュレーションの高精度化を目指し,スーパーコンピュータ「京」を使って,10,240個のアンサンブルで3週間分という,世界最大規模の「全球大気のアンサンブルデータ同化」に成功した(ニュースリリース)。必要とされる計算量は,これまでの100個程度のアンサンブルを使った場合に比べて100万倍という大規模なものになる。
スーパーコンピュータを使った天気予報を行う方法の1つに「アンサンブル予報」がある。アンサンブル予報は,風や気温などの時間変化を物理学の法則に基づきコンピュータで計算して将来の大気の状態を予測するシミュレーションを,並行して複数実行し,同等に確からしい「パラレルワールド(並行世界)」を作る。この平均やばらつきから,確率的な天気予報を行なう。
「アンサンブルデータ同化」は,アンサンブル予報で作られたパラレルワールドに実測データを加え,すべてのパラレルワールドを誤差の範囲内に制御する。これまでのアンサンブルデータ同化では,100個程度以下のアンサンブル(パラレルワールドの数)を用いていた。
今回,これを世界最大規模の10,240個に増やし,アンサンブルデータ同化の計算を約8倍高速化、理論ピーク性能比44%超という極めて高い実行効率を達成することで、全球大気のアンサンブルデータ同化を3週間分実行することに成功した。
これまでは観測の影響を2,000~3,000 kmに限定する必要があったが,今回の成果により,例えば日本から1万km遠方の観測データが,瞬時に日本の大気状態の推定精度を向上する可能性が明らかとなり,天気予報シミュレーションの改善に貢献することが期待される。