九州大学の研究グループは,有害物質除去用マイクロカーボンカートリッジ及び電気分解ユニットを装備した家庭用のアルカリイオン整水器により,水道水中に存在する放射性セシウム及び放射性ヨウ素イオンを効率良く除去できることを、初めて明らかにした(ニュースリリース)。
放射性核種に汚染された水道水及び食品に対市販のアルカリイオン整水器は,微生物や様々な有害物質除去のための浄水ユニットと内部被曝防護効果が期待できる電解還元水(ERW)製造ユニットを装備しているため,各家庭で利用できる放射線障害防護機器として有用であると考えられる。
特に,電気分解ユニットによって生成する,アルカリイオン水に含まれる水素分子やミネラルナノ粒子の活性酸素種消去作用により,放射性核種の体内への取り込みによって起こる内部被曝からの防護も期待できるという。
試験したアルカリイオン整水器は,日本トリム社製の水道蛇口直結型アルカリイオン整水器。日本でもっとも普及している代表的な機種の一つであり,多くの学術論文により機器の性能と作製された電解還元水の性質が最も良く解明されていると考えられる。
実験では,試験装置が効率的にCs及びIイオンを除去することを非放射性セシウム及びヨウ素イオンを用いて確認した後,137CsCl及びNa125Iを用いて除去能を検討した。15,000 Bq/kg(Csイオンとして3.16 ppb含有)の137CsClを含む水道水を試験装置に装備されたマイクロカーボンカートリッジに通し,通過液の放射能を測定したところ,その除去率は96.9%だった。
さらに,15,000 Bq/kg(Iイオンとして 0.0197ppt含有)のNa125Iを含んでいる水道水をマイクロカーボンカートリッジに通した浄水の放射能は有意に減少し,その除去率は99%以上だった。
今回使用した機器は陽イオンであるセシウムイオン及び陰イオンであるヨウ素イオンのいずれも効率良く除去できたことから,ストロンチウムイオンなど他の放射性核種も除去できる可能性が考えられる。また,福島第一原子力発電所の事故に伴い発生した大量の放射能汚染水の処理へのこの浄化技術の応用も期待されるとしている。