生理研ら,自閉症スペクトラム障害者は自分の動作が真似をされたことを気づくための脳部位の活動が低下していることを発見

生理学研究所(生理研),福井大学,金沢大学らの研究グループは,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,自分の動作が相手に真似をされたときの脳活動を測定した。その結果,他者の真似に気づくことに関わる脳部位の活動が,健常者に対し自閉症スペクトラム障害(ASD)者で減少していることが分かった(ニュースリリース)。

ASD者は,自分の動作が真似をされたことに気づくのが苦手と言われている。しかし,脳のどのような働きが原因で,真似をされたことに気づくのが苦手であるのかはよく分かっていなかった。

目で見た情報を専ら処理する脳部位を視覚野と呼ぶ。視覚野の中には,観察した身体の部位に対して強く反応する領域がある。この領域はExtrastriate Body Area(EBA)と呼ばれている。近年の研究でEBAは真似をされているときに活動が高まることが知られている。

今回の研究には,知的障害を有さないASD群19名(平均年齢25歳)と,年齢と知能指数を一致させた健常群22名が参加した。参加者は自分で動作を行なったあと,他者の動作を観察した。他者の動作は自分の動作と同じ場合と異なる場合がある。つまり他者の動作と自分の動作が同じ場合は「真似をされて」おり,異なる場合は「真似をされていない」ことになる。

fMRIを用いて健常群の脳活動を調べたところ,真似をされたときのほうが真似をされていないときに比べて,EBAの活動が高くなった。これとは対照的にASD群のEBAではこのような活動は観察されず,健常群とASD群の間に活動差があることが分かった。この結果はASD群のEBAが真似をされたときにうまく働いていないことを示している。

この研究により世界で初めて,真似をされた際の脳活動がASDで減少することが示唆された。近年,ASDの障害を軽減させるための行動的介入の研究が進められており,真似を活用した訓練が有用であることが示されている。この研究は,ASDの病態解明に重要な知見を与えただけでなく,行動的介入の効果を判定するのに活用できると考えられる。

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