理研,遺伝子改変によるラン藻の増殖促進と代謝改変に成功

理化学研究所(理研)は,微細藻類「ラン藻」の転写因子「NtcA」の遺伝子を改変してNtcAの量を増やすことで,ラン藻の増殖を促進させるとともに,代謝の改変にも成功した(ニュースリリース)。

ラン藻は光合成をする微細藻類。光エネルギーを利用して二酸化炭素を吸収できることから,二酸化炭素の資源化に役立つ。また,その光エネルギーと二酸化炭素を使い,バイオプラスチックや糖,アミノ酸,色素などの有用物質を作ることができる。

ラン藻種に広く存在するNtcAは,窒素栄養条件が変化した時に,窒素や炭素の代謝,光合成関連タンパク質などの発現を制御する。また,同時に他の転写因子の遺伝子の発現も制御するなど,ラン藻の窒素栄養条件に応答する主要な制御因子であることが知られている。しかし,NtcAの遺伝子を改変した時に,細胞全体にどのような影響があるかは分かっていなかった。

研究グループは,NtcAの遺伝子を改変してNtcAの量を増加させたラン藻を作製した。その結果,二酸化炭素を炭素源,光をエネルギー源とした培養条件下で,対照株(野生株)に比べて増殖が促進されることが明らかになった。また,メタボローム解析を行なったところ,グリコーゲンやアスパラギン酸といった糖やアミノ酸の量が変化することが分かった。

今回の成果により,NtcAを使った新しい代謝改変の方法が見つかった。二酸化炭素を使った環境に優しいものづくりは,現時点では実用化には遠いものの,資源の枯渇や環境問題の悪化に備えて,基盤技術を構築しておくことが重要。今後,ラン藻の代謝制御メカニズムの理解を深めていくことで,有用物質の生産につながると期待できる。

関連記事「理研、ラン藻の水素生産量を2倍以上増加させることに成功」「理研ほか、ラン藻が作るバイオプラスチックの増産に成功」「理研、窒素欠乏時のラン藻の代謝を網羅的に解析し、代謝の矛盾を解消」「理研,光合成によるバイオプラスチックの生産効率で最高レベルを達成