JSTは,理化学研究所の研究成果をもとに,平成21年1月から平成26年1月にかけてカネカに委託して,企業化開発を進めていた,独創的シーズ展開事業「委託開発」の開発課題「植物由来生分解性樹脂」の開発結果を成功と認定した(ニュースリリース)。
生分解性樹脂は,トウモロコシやジャガイモなどデンプン由来の糖類から生成させた乳酸を原料とするポリ乳酸が良く知られている。今回開発に成功した生分解性樹脂は,脂肪酸や油脂類を炭素源として微生物が体内に蓄積するポリヒドロキシアルカン酸系熱可塑性ポリエステル樹脂のPHBH(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体)で,硬質なポリ乳酸と比べてポリエチレンに似た柔軟性を持つ特徴がある。
樹脂の物性としても,加水分解されやすいポリエステルの中でPHBHは市販生分解性樹脂と比較して十分な性能を持ち,成形加工性についても各種用途に応用可能なことを確認した。こうした特性から幅広い利用が見込まれ,特にグリーンプラマーク(日本バイオプラスチック協会の認定マーク)取得可能な配合で農業用マルチフィルムを設計し,圃場でのフィールド試験においても良好な結果を得ている。
また,植物由来原料から微生物発酵で得られるカーボンニュートラルな生分解性樹脂として,使用後の廃棄物は土壌中の微生物により水と二酸化炭素に分解され,地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の量を抑制することが期待される。
今回,野生のPHBH生産土壌細菌を高生産菌へ品種改良し,微生物培養条件および精製条件を最適化することで,実証設備で生産能力約1,000トン/年を実現した。今後,商業化設備の検討を本格化させていく。
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