原研ら,ウラン系強磁性超伝導体において全く新しいタイプの磁性現象を発見

日本原子力研究開発機構(原研)と首都大学東京の研究グループは,磁性(磁石になり易い傾向)と超伝導(電気)が共存する唯一の超伝導体として知られているウラン系強磁性超伝導体において,既存の磁性理論では説明できない全く新しいタイプの磁性現象を発見した(ニュースリリース)。

水が氷になることや,磁石が高温で磁性を失うことなど,物理的・化学的に均一な物質の相(性質)が他の形態の相(性質)へ転移する相転移において,相転移に伴う物質の形態の変化は古くから詳しく研究されており,物質の種類や相転移の種類によらず,数学的に表現すると幾つかのタイプに分類できる事が知られている。

今回,研究グループは世界最高レベルの極めて純度の高いウラン化合物の単結晶を作成し,その磁性の変化を,温度・磁場を変えて,特に強磁性が発現する臨界点付近の挙動(臨界現象)を詳しく測定した。相転移は,試料内部の不純物の影響を強く受け易いため,詳しい相転移現象を調べるには,試料から不純物を可能な限り除去する必要がある。研究グループは,独自の高純度単結晶作成技術を有しており,世界最高レベルの極めて純度の高い単結晶の作成に成功し,この試料を用いて臨界点に極めて近い領域での温度及び磁場に対する磁化の応答を精密に測定してデータを分析した。

その結果,その挙動が理論的予想から大きく逸脱しており,従来知られている現象とは異なる新しいタイプの磁性現象が存在することを見出した。このことは新たな相転移現象の存在を示唆し,磁性が共存する超伝導メカニズムの解明に向けた大きな一歩といえるもの。

今回の発見は,原子力基礎研究を通して,固体物理学における相転移の研究に新たな展開を提供するとともに,超伝導を含めた新しい機能をもったウラン化合物を作るための原理の解明につながると期待される。