OIST,フェムト秒レーザを用いた標的型ドラッグデリバリーシステムを開発

沖縄科学技術大学大学院(OIST)は,パーキンソン病においてうまく機能していない神経伝達物質を,フェムト秒レーザにより自在に繰り返し放出する機構を開発した(ニュースリリース)。

パーキンソン病では,神経伝達物質ドーパミンが適切に機能しない。研究グループは,フェムト秒レーザの持つ極めて精密なタイミングと強度を用いてドーパミンの放出をコントロールすれば,正常な脳でドーパミンが分泌されるパターンを模倣し,再現できるのではないかと考えた。

そこで,まずリポソームのカプセルにドーパミンを閉じ込め,金ナノ粒子を繋ぎ止めた。フェムト秒レーザはエネルギー源として用いられ,このエネルギーがまず金ナノ粒子に吸収された後,リポソームに伝達されると,リポソームのカプセルが開いて中のドーパミンが放出されるという仕組み。

リポソームが開いている時間の長さ,つまりドーパミンの放出量は,レーザーの強度と照射時間を調節することにより,緻密にコントロールできる。この方法では,過去に報告された研究事例とは異なり,レーザが当たってもリポソームは破壊されない。

そのため,ドーパミンやその他リポソームに内包した化合物を繰り返し放出するよう制御できる。この技術では,実際に脳内で神経伝達物質が放出される時のように1秒以下の精度で,幅広い種類の薬物を投与することができるという。

研究グループは今後,このレーザ活性化リポソームを生体組織に用い,いずれは動物生体内において実証していくとしている。およそどのような薬や化合物,天然由来化合物でも,必要な量を,必要な場所に,必要なタイミングで,狙い通りに放出する技術として,医療分野の新たな可能性を広げると期待される。