QDレーザと東大,レーザ網膜走査型ウェアラブル情報端末「レーザアイウェア」を開発

QDレーザと東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構は,共同開発したレーザ網膜走査型のウェアラブル情報端末「レーザアイウェア」のプロトタイプを,2014年6月6,7日に開催した東大駒場リサーチキャンパス公開2014において公開した(ニュースリリース)。

QDレーザは富士通研究所と東大との産学連携による開発を基に,可視光領域から波長1300nm帯までの量子ドットレーザをはじめとする各種量子井戸半導体レーザの製造・販売を行なっているが,開発中のレーザアイウェアは同社のRGBの量子井戸半導体レーザを採用したもので,独自のレーザ網膜走査光学系に関わる技術基盤を確立し,メガネタイプのヘッドマウント・ディスプレイに仕上げた。

今回発表したレーザアイウェアはプロトタイプだが,昨年同キャンパスで公開したものに比べ,さらに小型化(スマート化)したという。現状使用しているレーザ光源の出力は数mWだが,フィルタリングを施して安全性に配慮し,クラス1の最大許容露光量1/40(B),1/400(G,R)とした。

プロトタイプは砲弾型の半導体レーザの光を光ファイバで伝送し,メガネフレームに組み込まれた圧電MEMSミラー(ミツミ電機と共同開発)で走査して網膜に映像を映し出す仕組み。現状の水平視野角は25°で,スキャンレートは20数kHzという。このうち,水平視野角は原理的に60°まで得ることができるとしている。

レーザ網膜走査型は高輝度,高色再現性,広視野角で,画像サイズや位置を自在に変更できるほか,近眼・老眼など装着者の視力を選ばないフォーカスフリーという特長がある。しかしながら,実用化に向けてはコスト(主としてレーザのコスト)や重量,装着性に課題があるのが実情だ。

今後の開発と商用化に向けて,QDレーザ・代表取締役社長の菅原充氏は,<0.1Wの低消費電力化と1ccの部品小型化を進めるとし,2015年末には有線による作業支援用,2017年末には民生対応(無線)での実用化を目指すとしている。このうち,作業支援用途としては,例えば,コントロールセンターから工場への指示情報の表示を想定している。

レーザアイウェアはさらにスマート化へと進む。将来的にはシリコン上にレーザや光学系を作り込みチップ化することで,小型化に加えて装着性を高めるとしている。今後の開発動向が注目されるところだ。

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