リコーは,室内の微弱な光源における発電性能を大幅に向上させた色素増感太陽電池の電解質を,固体材料のみで構成することに成功した(プレスリリース)。これにより,色素増感太陽電池において安全性および耐久性の面で大幅な優位性を確保した。
色素増感太陽電池は,散乱光や屋内照明等の微弱光でも効率よく発電できるという特長を持つ。色素の可視光吸収を利用して発電するもので,表面に有機色素を吸着したナノメートルサイズの酸化チタン粒子からなる多孔質の膜を形成した透明導電性基板と,金属薄膜を形成したガラス基板の間にヨウ素系電解液を封入したものが一般的な構造になっている。
しかし,発電効率が他の太陽電池と比べて低く,液体の電解質を用いているため安全性(ヨウ素や有機溶媒の揮発や電解液漏れ)や耐久性(電解液による酸化チタンに吸着した有機色素剥がれ)に課題があり,実用化が困難とされてきた。
リコーは今回,有機P型半導体と固体添加剤で構成されたホール輸送性材料を用いた。これらの材料を利用する際,独自の製膜技術(超臨界流体二酸化炭素:SCF-CO2下での製膜)により,従来では困難であったナノレベルの酸化チタン粒子の多孔質膜内部に上記ホール輸送性材料を高密度に充填することに成功した。これにより,液漏れやヨウ素による腐食や人的有害性といった,色素増感太陽電池の持つリスクがなくなった。
また,電解質を固体材料のみで構成するにあたって,固体添加剤とデバイス構造を最適化することで,発電効率も大幅に向上した。さらに室内光源波長に適した有機色素を設計することで,室内光における高い発電性能を得ることに成功した。
標準的な白色LED(200ルクス)において,市場でトップレベルの性能とされているアモルファスシリコン太陽電池(6.5μW/cm2)と比べ,新開発の固体型色素増感太陽電池は,13.6μW/cm2と2倍以上,またこれまでに発表されているもっとも高性能な電解液型色素増感太陽電池(8.4μW/cm2)と比べても1.6倍以上の優れた発電性能を確認した。
また,さまざまな耐久性試験も実施しており,85℃の環境下で2,000時間後においても最大出力値の低下は無いとしている。