東北大,Si基板上にグラフェンを三次元集積的に成長させることに初めて成功

東北大学の研究グループは,東京大学,高輝度光科学研究センターらのグループと共同で,グラフェンをSi基板上に三次元集積的に成長させることに初めて成功した。さらに,この方法により,グラフェン物性の作り分け(金属性 vs. 半導体性)にも成功した(プレスリリース)。

東北大の研究グループでは,既存のシリコンデバイスとの融合を企図した,Si 基板上へのグラフェン(GOS)の作製及びそのデバイスの研究開発を行なってきた。GOS 技術は,Si 基板上に単結晶SiC薄膜を成長させ,このSiC 薄膜表面にグラフェンを形成するという技術。

このGOS技術は,成熟したSi技術の利用が可能であるため,グラフェンの実用化に可能にする重要な技術になると期待されている。更には,Si 基板の面方位を適切に選択することにより,グラフェンの物性の作り分け(金属性 vs. 半導体性)が可能であることを明らかにしている。

この技術とSi 微細加工技術による異なる面方位を露出させることにより,グラフェンの物性をナノスケールで作り分けすることが可能となると考えられる。

研究グループは,微細加工により異なる面方位が露出したSi基板を用いて,異なる物性を有するグラフェンの作製を狙った。MEMS(技術)を用いて,Si(100)基板上にSi(100)面に加えSi(111)微斜面を作り込んだ。この基板上にSiC薄膜を作製し,試料を1250℃で加熱することにより最表面にグラフェンを作製した。

このグラフェンに関して,SPring-8三次元 ナノESCAを用いて界面化学結合状態を,理研 BL17SU の光電子顕微鏡を用いてグラフェンの積層構造を調べた。更に,顕微ラマン分光法を用いて,グラフェンのバンド構造を評価した。その結果,当初の狙い通りに,Si(111)微斜面上では半導体性グラフェンに,またSi(100)上では金属性グラフェンに作り分けることに初めて成功した。

半導体性グラフェンは電子デバイス応用に,金属性グラフェンは光デバイス応用に適している。ゆえに,今回の成果は,同一 Si 基板上に異なる機能を有するデバイスをグラフェンを用いて作製することを可能とした。

このことは,同一 Si 基板上にグラフェンを用いた電子デバイス・光デバイスを混載させた超高速回路の作製が可能となることを示唆しており,テラヘルツデバイス開発へ向けた大きな前進であると言える。