基生研ら,大脳皮質深部の神経活動を長期間記録することに世界で初めて成功

自然科学研究機構 基礎生物学研究所のグループは,東京大学,玉川大学,日本医科大学との共同研究により,マウスが道具を使って運動課題を学習する過程において,2光子顕微鏡を用いたカルシウムイメージング法により,大脳皮質運動野の浅層から深層(脳表から約500μm)に至るまで,延べ8,000個の神経細胞の活動を2週間にわたって計測することに世界で初めて成功した(プレスリリース)。

この神経細胞の活動パターンの中に,練習によって脳に蓄えられる情報である「手続き記憶」がどのように記録されていくのかを評価するために,神経細胞およびその集団の活動からマウスの動きをどの程度予測できるかを定量化し,その予測精度が訓練期間中にどのように変化するかを調べた。

その結果,学習期間において動物が運動課題に熟達する中期から後期にかけて,学習した運動の記憶が大脳皮質深層,特に大脳基底核へ信号を送る細胞の新たな活動パターンとして保持されることがわかった。運動がある程度のレベルに達してからも,がんばって練習を続けると難しいスキルでも無意識にできるようになるのは,その運動を自動的に生み出すための新しい回路が大脳皮質深部に形成されたことによると考えられる。

この研究成果は,運動学習や運動制御のメカニズムと運動疾患の病態に関する理解を深めるとともに,新しい人工知能や自律的に運動するロボットの新しい設計基盤となるもの。