東北大ら,グラフェンデバイスの動作中表面電位をピンポイントで測定することに成功

東北大学電気通信研究所のグループは,東京大学らのグループと共同で,東京大学放射光アウトステーション BL07LSU(SPring-8)にある三次元ナノ ESCA 装置(空間分解能 70nm)を用いて,動作中のグラフェン電界効果トランジスタ(GFET)の狙った場所の電位をピンポイントで測定する技術の開発に初めて成功した(プレスリリース)。

ポストシリコン材料の一つであるグラフェンはシリコンと異なる物性を有する為,GFET は実用化が困難だった。今回の測定技術はGFETの精密なデバイス設計を可能にするものであり,GFETの実用化を大きく前進させるもの。

今回研究グループは,GFET の電位を狙った場所でピンポイントで測定する 3D nano-ESCA 解析技術の開発を行なった。3D nano-ESCA は光電効果を用いて物質中のフェルミ準位(≈電位)の測定を可能にする走査型光電子顕微鏡と呼ばれる装置であり,世界で唯一100nm を切る高い空間分解能と,200meV 以下の高いエネルギー分解能を併せ持つ。

今回,3D nano-ESCA の試料ホルダーに特殊な加工を施して測定室外部から独立に5端子に電圧印加,電流測定できるようにし,試料を FET デバイスを動作させながら測定出来るように工夫した。この結果,GFET の狙った場所に直径70nm の放射光を照射して電位(フェルミ準位)を測定することに世界で初めて成功した。

研究グループは今後,デバイス作製プロセス・デバイス評価と今回の測定技術を組み合わせることにより,基本に立ち戻った精密な GFET 応用研究を展開する。更には,企業との共同研究を積極的に行ない,世界最初の GFET の実用化を目指す。