JAMSTECら,35億年前の深海熱水環境に窒素固定微生物が存在していた可能性を発見

海洋研究開発機構(JAMSTEC)と東京農工大学ならびに東京工業大学の研究チームは,初期生命がどのように進化し,生態系を拡大させていったのかを解明するために,窒素固定代謝の起源について研究を進めてた。

窒素固定代謝は,生命の維持に不可欠なタンパク質などの窒素化合物を生み出す役割を持っており,海洋における生物生産量を決定する重要な要因と考えられている。今回,初期生命が誕生した環境として最も有力視される深海熱水環境に生息するメタン生成古細菌(メタン菌)について,窒素固定代謝の発現条件などを実験により決定することに成功した。

その知見をもとにこれまでの地質記録を解析したところ,35億年前の深海熱水環境には窒素固定を行う超好熱性のメタン菌に支えられた微生物生態系がすでに存在した可能性が高いことが明らかになった。

この成果は,地球初期の深海熱水環境で誕生した化学合成生態系から,光合成生態系が窒素固定代謝を受け継いで分離し,海洋表層での窒素化合物の供給を担うことで,生命の進化に大きな役割を果たしたことを示唆している。