東北大、日常生活での身体機能と生活習慣の改善が災害時のメンタルヘルス悪化の予防策になる可能性を示唆

東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野(医学系研究科運動学分野兼務)助教の門間陽樹氏、教授の永富良一氏のグループらは、仙台市内の勤労者を対象に東日本大震災発生以前から行なっていた健康調査のデータを解析することで、身体機能をはじめとする震災発生前の身体状態や生活習慣が、震災発生後の精神的ストレスと関連することを明らかにした。(ニュースリリース

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これまで災害時のメンタルヘルスを対象とした研究は災害発生後に調査が行なわれているのに対し、この研究により、災害発生前の状態が災害発生後の精神的ストレスに影響を与えること、さらに、日常の身体機能の維持・向上が災害時のメンタルヘルス悪化の一次予防策になる可能性が世界で初めて示された。

研究室では仙台市の勤労者を対象に東日本大震災発生以前から行なってきた健康調査のデータを用い、2010 年に研究に同意した健診受診者1185名を対象に、アンケートによる生活習慣(喫煙習慣、飲酒習慣、身体活動量、食習慣、睡眠時間、歯磨き習慣)、人口統計学的特性(性別、年齢、職種、教育歴、婚姻状況、居住人数)、既往歴(糖尿病、高血圧、脂質異常症)および脚伸展パワーを評価した。

さらに、震災が発生した2011 年に、震災による精神的ストレスの指標として改訂版出来事インパクト尺度(Impact of Event Scale-Revised: IES-R)の評価を行なうとともに、震災による家屋被害、人的被害および仕事量の増減についてアンケートを実施した。分析対象者は、追跡不可能者や欠損値を除いた522 名だった。

分析の結果、男性においては、震災発生前の2010 年時に脚伸展パワーが高い人は IES-R 得点は低い関連が認められ、また、毎日お酒を飲んでいた人および抑うつ傾向であった人は IES-R 得点が高い関連が認められた。女性においては、男性と同様に、2010 年時に抑うつ傾向があったものは IES-R 得点が高い関連が認められた一方で、高血圧であった場合も IES-R 得点が高い関連が認められた

東日本大震災などの大規模災害が影響を及ぼす地域は広範囲に渡り、多くの人に影響を及ぼすため、甚大な被害を受けた被災者に限定することなく、メンタルヘルスに影響を与える因子を特定することは重要なことであるといえる。