東大,恒星表面の鉄濃度が周辺ガスにより増加することを証明

東京大学大学院理学系研究科とアメリカ国立光学天文台を中心とする国際研究チームは,「鉄の量が少ない恒星の表面に鉄の多いガスが衝突・付着することで恒星表面の鉄の濃度が増加する」という仮説を,天の川銀河に含まれる主系列星約1万天体の軌道運動と表面の鉄の濃度を解析して検証した。その結果,天の川銀河のハローに属する主系列星の中には,表面の鉄の濃度が増加しているものが存在する可能性が高いことが判明した。

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宇宙の始まりであるビッグバン以降,宇宙における鉄の量は単調に増え続けている。恒星は宇宙空間のガスから形成されるため,宇宙初期に生まれた恒星は誕生時の鉄の濃度が低く,最近生まれた恒星は誕生時の鉄の濃度が高い傾向がある。

これまで,恒星表面の鉄の濃度は誕生時の「先天的」な値から変化しないものと考えられており,恒星の年齢を測る指標として長らく利用されてきた。一方,この通説に反する仮説も提唱されていたが,観測的に検証することは困難であり,これまでなされていなかった。

今回の結果は通説に基づいて恒星の年齢を推定する従来の手法の欠陥を示唆し,天の川銀河の従来の歴史描像に修正を迫るとともに,宇宙で最初に誕生した星に関する学説に影響を与える可能性もある。

詳しくは,東京大学プレスリリースへ。

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