東大,恒星表面の鉄濃度が周辺ガスにより増加することを証明

東京大学大学院理学系研究科とアメリカ国立光学天文台を中心とする国際研究チームは,「鉄の量が少ない恒星の表面に鉄の多いガスが衝突・付着することで恒星表面の鉄の濃度が増加する」という仮説を,天の川銀河に含まれる主系列星約1万天体の軌道運動と表面の鉄の濃度を解析して検証した。その結果,天の川銀河のハローに属する主系列星の中には,表面の鉄の濃度が増加しているものが存在する可能性が高いことが判明した。

1

宇宙の始まりであるビッグバン以降,宇宙における鉄の量は単調に増え続けている。恒星は宇宙空間のガスから形成されるため,宇宙初期に生まれた恒星は誕生時の鉄の濃度が低く,最近生まれた恒星は誕生時の鉄の濃度が高い傾向がある。

これまで,恒星表面の鉄の濃度は誕生時の「先天的」な値から変化しないものと考えられており,恒星の年齢を測る指標として長らく利用されてきた。一方,この通説に反する仮説も提唱されていたが,観測的に検証することは困難であり,これまでなされていなかった。

今回の結果は通説に基づいて恒星の年齢を推定する従来の手法の欠陥を示唆し,天の川銀河の従来の歴史描像に修正を迫るとともに,宇宙で最初に誕生した星に関する学説に影響を与える可能性もある。

詳しくは,東京大学プレスリリースへ。

その他関連ニュース

  • 電通大ら,写真で青い低緯度オーロラの出現場所推定 2024年12月06日
  • JAXA,大質量星とブラックホール候補のガスを観測 2024年11月29日
  • 公大,1台のカメラで薄膜の皺の大きさを測定 2024年11月22日
  • 国立極地研究所ら,日本出現のオーロラ色の謎を解明 2024年10月31日
  • 広島大,暗黒物質に関する新しい観測手法を提案 2024年10月03日
  • 三菱電機,宇宙光通信モジュールの軌道実証に成功 2024年09月30日
  • 筑波大,超高光度降着円盤の歳差運動を実証 2024年09月20日
  • NAOJら,カイパーベルト外に未知の天体集団を示唆 2024年09月05日