高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,次世代の放射光源加速器として期待されているERL(エネルギー回収型ライナック)の技術検証のために建設されたコンパクトERLで,エネルギー回収運転に成功した。
コンパクトERLは,KEKが日本原子力研究開発機構,東京大学物性研究所,分子科学研究所(UVSOR),広島大学,名古屋大学等と共同研究,技術開発を行なっている加速器。2012年より建設開始し,2013年5月末には入射部にて電子ビームの加速に成功している。
輝度電子銃から390 kVの電圧で加速された電子ビームを高輝度電子銃から引き出し,入射部超伝導空洞で2.9 MeV(図中青色で表示)まで加速。 その電子ビームを主加速部超伝導空洞(主空洞)へ導き,約20 MeVに加速。その後電子ビームは周回部を回り,再び主空洞に戻ってくる。
電子ビームは,最初の2.9 MeVの電子ビームとほぼ同じ軌道上に戻るが,2.9 MeVの電子ビームと逆位相になるように周回部の軌道長を調整する。 逆位相のまま主空洞に導かれると電子ビームは「加速」ではなく 「減速」される。この減速によって回収されたエネルギーは,主空洞内の電磁場に蓄えられ,次の2.9 MeV電子ビームの加速に利用される。 最後に,エネルギーを回収されたビームは,ビームダンプに導入されて止められる。
今回の運転では,この一連の運転が行なわれた。ERL技術の肝となる,周回してきた電子ビームを入射部から電子ビームとちょうど逆位相になるように主空洞に導くことが確かめられ,エネルギー回収運転ができるようになった。
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