理研ら,XFEL施設「SACLA」向け高性能X線イメージング検出器を開発

理化学研究所と高輝度光科学研究センター(JASRI)は,X線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」で使用するX線イメージング検出器「マルチポートCCD検出器」の開発に成功したと発表した。これは,理研,JASRI,および分子科学研究所,明星電気,英国e2v社,英国XCam社らの国際共同研究開発グループによる成果。

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XFEL施設「SACLA」は,物質内の原子の動きを知るための強力な手段。SACLAを使う実験では,発生させたX線レーザを計測対象(試料)に照射し,散乱または透過したX線のパターンをX線イメージング検出器によって測定する。

X線パターンを高い精度で測定するためには,1) 強い放射線耐久性(センサは1年間で医療用レントゲン撮影の1億回以上のX線量を浴びると予想される),2)多くのX線光子を測定するための効率的な電荷収集,3)SACLAの全X線レーザショット(1秒間に60回)を正確に測定する性能,4)100 mm×100 mmを超える大面積のセンサを備えることが要求される。しかし,これらの性能を全て満たすX線イメージング検出器はこれまで存在しなかった。

そこで共同開発グループは,CCD(電荷結合素子)センサの先端技術を駆使することで,X線パターンの高精度測定に必要な条件を満たす「マルチポートCCD検出器」を開発した。

具体的には,特殊な金属・絶縁体・半導体(MIS)構造をもつCCDセンサを開発した。従来MIS構造をもつCCDセンサは,XFEL実験のような高強度のX線が照射される環境では,センサの中の絶縁体が帯電して動作しなくなると信じられていた。今回,X線が照射された際に引き起こされる損傷のメカニズムを実験的に検証し,酸化物層を特に薄く製造した場合,XFEL実験で要求されるX線に対する耐久性である1メガグレイという極めて高い耐久性が実現できることを見いだした。

次に特定のCCDセンサの構造を用いることで,大量のプラスとマイナスの信号電荷が発生した場合においても,センサ内部の電荷収集を担う電場が崩れない条件をシミュレーションにより見いだし,実際に製造したCCDセンサを使い,この条件が満たされていることを確認した。これにより1光子を間違いなく捉えつつ,X線光子が数千光子に至るまで極めて正確に測定することが可能となった。

また,このCCDセンサの構造で毎秒60回撮像する高速動作への対応が可能となる設計を行ない,高速撮像時においても1光子を間違いなく検出できるレベルまでノイズを低くすることにも成功した。

100 mm× 100 mmの大面積イメージ領域は,1個25 mm× 50 mmの大型センサを8個並べる構造で実現。配線構造を極細化し,センサ間の隙間を0.3 mm以下とすることで,センサの性能を劣化させずに放出されるX線を捉えることが可能となった。

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