産総研ら,基板上に塗工・印刷が可能な単層CNTコート剤を開発

NEDOのプロジェクトにおいて,単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)と産業技術総合研究所(産総研)は,産総研が開発した高効率で高品質な単層CNTを得ることができる,スーパーグロース法によって得たCNTを溶媒中に高濃度で分散させ,基板上に塗工・印刷が可能な単層CNTコート剤を得ることに成功した。

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さらに,これによって平坦性・厚さ制御性に優れたスーパーグロースCNT大面積厚膜を塗工する技術や,印刷法によって微細パターンを有するスーパーグロースCNT厚膜を形成する技術も開発した。

具体的には,単層CNTコート剤をブレードコーティング法により基板上に塗工することで,平坦性に優れた(平坦性:Ra/t<10 %,Raは表面粗さ,tは膜厚)大面積単層CNT膜を得ることが可能になった。また,膜厚を広い範囲(数百nmから数十µm)で制御することもできる。さらに,単層CNTの微細パターンを基板上に形成することも可能で,最小幅50 µmの細線印刷にも成功している。

また,他のCNTと比較して優れた塗工性も示した。スーパーグロースCNT膜は極めて平坦性に優れているのに対して,市販の短尺多層CNTから得られた膜は,乾燥時に無数の亀裂が発生した。今回開発したコート剤は,長尺な単層CNT同士が絡まり合い無数の接点を形成している網目構造を,高濃度で溶媒中に分散させている。この網目構造によってCNT間の結合が膜の乾燥工程においても保たれると考えられるという。

単層CNTコート剤を構成する溶媒は水や様々な有機溶媒から選択できる。この点を利用して,溶媒中に他の物質を溶解させて,単層CNTからなる複合材料膜を塗工することも可能。また界面活性剤などの分散剤を一切用いずに,電極材料などに適した不純物が極めて少ないCNT膜の塗工も行える。さらに塗工する基板も無機・有機を問わない。

これらの技術を用いることで,電池用電極部材などをはじめとする様々な製品に低コストで単層CNTを利用することが可能になる。特に電気二重層キャパシタなどの電池用電極部材用途に関して,塗工膜の利用に関する検討が開始されている。さらに,高電流容量配線,放熱用部材,フレキシブルエレクトロニクス部材,黒色コーティング膜,高強度軽量部材など,様々なCNT機能性部材の成形技術に使われることが期待される。

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