基礎生物学研究所, 脳由来神経栄養因子を制御するタンパク質を発見

基礎生物学研究所・統合神経生物学研究部門研究員の鈴木亮子氏と同教授の野田昌晴氏らの研究グループは,ニワトリ及びマウスを用いた研究から,脳由来神経栄養因子(BDNF)のプロセシングがSPIG1というタンパクによって制御されていることを明らかにした。

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BDNFは,神経細胞の生存や分化,さらに神経回路の形成や記憶・学習の基盤である神経シナプス可塑性の調節に関わる重要な分泌性因子で,その分泌異常や機能不全は,うつ病,統合失調症といった神経疾患の原因となることが知られている。

BDNFは,神経細胞内で前駆体BDNFとして合成された後,分泌前あるいは分泌後にプロテアーゼにより切断修飾を受けて,成熟体BDNFになる(この過程をプロセシングと呼ぶ)。これまでに,このBDNFのプロセシングに関わるプロテアーゼはいくつか報告されているが,プロセシングを調節する仕組みについては十分明らかにされていなかった。

研究グループは,ニワトリの網膜を構成する細胞を使った培養細胞実験および生化学実験により,SPIG1は細胞内で前駆体BDNFと同じ分泌顆粒内に存在すること,SPIG1は前駆体BDNFに高親和性で結合することと,SPIG1が,前駆体BDNFから成熟体BDNFへのプロセシングを抑制することを突き止めた。

この研究により,不明な点が多く残されている脊椎動物における領域特異的神経結合形成のメカニズムおよびスパイン形成のメカニズムの一端が明らかになった。脳内においてBDNFが適切に働く上で,SPIG1がそのプロセシングにおいて重要な調節を行なっていることが明らかになった。

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