東北大学とNECは,スピントロニクス論理集積回路技術を応用した無線センサ端末向けマイクロコントローラ回路(MCU: Micro Control Unit)を新たに開発し,その動作実験において,従来技術と比較してMCUの消費電力を1/80まで削減することを実証した。これにより,MCUを搭載したセンサ端末の電池寿命を約10倍まで延ばすことができる。
今回研究グループは,MCU内の論理回路とメモリを不揮発化することでMCU全体の待機電力を削減し,高性能と省電力を両立した。このMCUを無線センサ端末に適用することで,消費電力を大幅に抑えながら高度なデータ処理が可能となる。
具体的には,論理回路の中にある電源制御回路や複数の機能ブロックにスピントロニクス素子を適用。これにより,待機電力を最小限に抑えながら,高速な電源制御を実現。必要な機能ブロックの電源オン状態への移行は,約120ナノ秒という極めて短時間で出来るとともに,小まめな電源オフが可能となり,不要な電力を削減する。
また,回路の中で消費電力の大きいレジスタ内の不揮発素子への書き込みに対し,電源オフ状態に移行する直前に書き込みを命令するCPU回路を新たに開発。さらに書き込み前後のデータが同一の場合には上書き処理をキャンセルするといった緻密な制御を行ない,不要な書込みによる消費電力の増加を抑制した。
この技術を搭載したマイクロコントローラを試作し,無線センサ端末への動作を想定した実験を行なったところ,消費電力を従来比1/80に削減することに成功した。具体的には,90nmのCMOS回路と三端子MTJ素子を組み合わせた集積回路チップを作成し,センサ端末での使用を想定したデータ収集と演算処理を実施した。
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