東大、柔らかいワイヤレス有機センサシステムの開発に成功

科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、東京大学教授の桜井貴康氏、同じく教授の染谷隆夫氏らは、世界で初めて柔らかいワイヤレス有機センサシステム(有機デバイスだけで構成されるワイヤレスセンサシステム)の開発に成功し、そのセンサーシステムとしての有用性を柔らかい水分検出センサシートで実証した。開発したセンサシステムは、離れたところからワイヤレスで電力供給が可能で、水分検出センサからのデータも最適な通信条件で取ることができる。

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ワイヤレスセンサの急速な発展によって、生活空間におけるさまざまな物理情報の計測と活用が進んでいて、センサの計測対象は、最近、物から人へ急速に拡大している。人体に接触しながら生体に関する情報を計測する際には、装着感のない柔らかさ、衛生面から使い捨てにできることなど、従来の電子部品になかった課題の解決が急務となっている。

研究グループは、高分子フィルム上に有機集積回路を作製することで、ワイヤレスで電力とデータを伝送できる柔らかい水分検出センサーシトの開発に成功した。開発の決め手は、世界で初めて、有機集積回路を駆動するための電力伝送に電磁界共鳴法を採用したこと。これによって、高効率に長距離のワイヤレス電力伝送と通信が可能となった。

有機集積回路は主に3つのブロックから構成されている。第1のブロックは、有機ダイオードを用いた整流回路で、電磁界共鳴によりワイヤレスで電力を受ける。第2のブロックは、抵抗変化で発振周波数が変化する有機リング発振回路で、水分による抵抗の変化をワイヤレスにデータ転送する。第3のブロックは、有機ダイオードを用いた静電気保護回路で、2キロボルト(kV)に帯電した人体に触れても壊れない耐性を実現した。

今回の研究の原理は、水分以外にも、温度や圧力などさまざまなセンサに応用することも可能。今後は、ばんそうこうやおむつなど装着感が少なく使い捨てにもできる衛生的なセンサとして幅広い用途への応用が期待される。

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